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小さな一歩から始まる

以下は『農業経営者』2019年8号「スマート・テロワール通信24」に掲載された記事を転載させていただきました。

 

小布施で北信スマート・テロワールの活動が始まった。これを機に改めて原点を振り返ろう。

現在、日本ではコメ離れが進んでいる。多様な食を楽しむという食生活の大転換が起きているからだ。コメに固執していると、消費者の変化に対応できない。結果的に自給率が下がっていく。現に水田の約3分の1が休耕田になっている。一方、畑作物、特に穀物は世界水準の収量に達していない。スマート・テロワールの原点はこのような農業への問題意識である。

「スマート・テロワールが目指すべきは、地域ユニット内の「自給圏」です。つまり、食料は地産地消、住宅(木材)も地産地消、電力も地産地消が原則です。ユニット内の物質循環、産業循環、経済循環が可能な単位といえます。(中略)

地元で栽培した、現在自給率の低い大豆や小麦などの穀物をベースにした加工食品をつくる。同じく自給率の低い子実トウモロコシを栽培する。その餌で育った肉類を加工し、地元で食す。地元で愛される食べ物ができれば、その地域にしかないオンリーワンの誇りが生まれ、愛着が深まっていきます。

私の提案は、地域に立脚し、地域が栄える自給圏=あらたな経済圏をつくろうという考え方です」(故松尾雅彦氏の著書『スマート・テロワール』抜粋)

 今回、私は小布施町で畜産と農業と食品加工を連結する壮大な夢に挑戦している若者に出会った。(株)小布施牧場代表木下荒野氏である。

木下氏はジャージー種の牛を放牧型で10頭ほど飼育し、完熟堆肥を還元した農地で、トウモロコシ、牧草、麦わらなどを飼料に使用している。また、牛乳からジェラートとチーズを製造する加工販売業も展開して、牧場の近くに販売所を設け地元の人々に提供している。

トウモロコシは牧場の隣地の休耕地を農家から借りて栽培している。牧場の周囲には、ほかにも休耕地が大きく広がっている。木下氏はこれを活用して牧場と畑地を徐々に拡大していこうと意気込んでいる。

 

 まだ始まったばかりの挑戦だがまさにスマート・テロワール実現の第一歩を踏み出しているといえる。こうした若手農家の勇気ある挑戦に惜しみない拍手を送りたい。