再生エネルギーは地産地消に適合する

以下は「スマート・テロワール協会」の中田康雄が『農業経営者』2020年2月号に寄稿したコラムです。出版元の農業技術通信社昆社長のご好意で転載させていただいております。

 

すでに遅すぎるのかもしれない

温暖化による高温と乾燥がアマゾンやオーストラリアなどで大規模な森林火災を引き起こしている。

「北極圏のツンドラ地帯の気温上昇は温暖化を加速する。

永久凍土が溶け、とじ込められていたメタンが大気中に出るからだ。

メタンは二酸化炭素(CO2)よりも大きな温室効果をもつので気温はさらに上がり、

より多くのメタンが出る。

すでに北極海沿岸からロシアの永久凍土地帯の南限までの距離は、

産業革命前に比べて約5分の1縮んだ」(日本経済新聞20191226日付朝刊)

メタンガスの放出を阻止しなければ、温暖化は急加速する。

対策は、すでに遅すぎるのか。

 

いまからでも遅くはない

「温暖化ガスを減らすのに、新たなブレークスルーをもたらすイノベーションは必要ない。

それよりも石炭と石油、ガスの使用をやめることだ。

石炭火力は太陽光や風力、水力、バイオマス発電などに置き換えられる」(同)

いまからでも遅くはない。

再エネへの転換は、これまでのエネルギー開発のような大規模化の道筋をたどる必要はない。

むしろ地産地消型の地域密着の小規模で行なうほうが良い。

 

再エネは地産地消に適合する

地域の需給バランスを巧みにとるには、大規模な発電・蓄電装置より、

地域の需要に見合った発電・蓄電装置で地域限定のシステムを構築するほうが効率的である。

需給バランスを実現するスマート・グリッドも、

地域限定ならよりきめ細かい最適解を導くはずだ。

 

地産の再エネはスマート・テロワールのエネルギー源 

地域の生ゴミや人間・家畜の糞尿を発酵させると発生するメタンガスで発電し、

残渣を堆肥として畑に返す。

この循環型のエコシステムは、スマート・テロワールが目指す地域限定のシステムとして最もふさわしい。

かつて穀物を挽き搾油に使用されていた水車はエコシステムだ。

畑作穀物の乾燥、脱穀、製粉、製麺、製パンなどのプロセスを地域実装するとき、

現代の技術を活用した地域限定のシステムが水車に代わって地域の食品加工業を支えるに違いない。