このブログは農業技術通信社発行『農業経営者』2020年3月号に掲載されました。
同社社長昆吉則氏のご好意により転載させていただいております。
『健土健民』
昭和初期に日本の酪農業の先達として活躍し、雪印乳業株式会社の基礎を築いた黒澤酉蔵は畜産に関わる方にとってはなじみ深い方でしょうが、寡聞にして私は昨年11月の「庄内スマート・テロワール豊穣感謝祭」での松山准教授(山形大学農学部)のご講演ではじめて知りました。
黒澤は青年期に足尾鉱毒事件で著名な田中正造に師事し、一時は社会活動に身を投じましたが、母上の死を契機に北海道に渡り、酪農に携わることになりました。
黒澤の残した思想に。『健土健民』があります。
これは健康な民は健康な乳製品を産む健康な牛によって育まれ、健康な牛は健康な牧草によって育まれ、その健康な牧草は健康な土によって育まれるという思想であります。
つまり農畜産業の基礎は肥沃な土壌によってはじめて強固な基盤を得ることが可能になるということです。
『循環農法図』
黒澤はこの『健土健民』の思想に基づいて『循環農法図』を著します。
黒澤の思想は「酪農学園大学」の建学の精神に引き継がれ、その精神は循環農法を引用して次のように謳われています。
「『地下資源には限りがある。しかし土の寿命は尽きることがない。その生命力を育てれば無尽蔵の資源となる』
『農業とは天地人の合作によって、人間の生命の糧を生み出す聖業である』ことから、人と自然が共生し、物質やエネルギーが循環するシステムをつくる」。
黒澤の「健土健民」そして「循環農法図」はまさに「スマート・テロワール」の思想にほかなりません。
黒澤は「耕畜連携尾」とこそは言挙げしてはいませんが、肥沃な大地こそ健全な農業と畜産業を育み、そして健康な民を育むと喝破したことで、畜産のみならず農畜産業の偉大な先達であったといえましょう。
以下の図は「酪農学園大学」のホームページから引用しました
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