このブログは農業技術通信社発行『農業経営者』2020年7月号に掲載されました。
同社社長昆吉則氏のご好意により転載させていただいております。
前号で地方分権の必要性を述べた。並行して地方への資源分散を考えなければならない。
藻谷浩介氏によると、東京の可住地面積(林野と湖沼を除いた面積)1平方km当たりの人口密度は9454人に達する。大阪は6716人、神奈川が6172人。4番目の埼玉からぐっと小さくなって2794人。最も小さいのは北海道の248人である。
今回の新型コロナ感染症対策が人口密集により困難を極めたことは周知のとおりである。
コロナ禍に際し、杉本達治福井県知事が指摘した資源分散の提案は的を射ている。
「次に来るのは首都直下型地震であり南海トラフ地震だ。東京など都市部に人を集めるのは日本社会のリスクでしかない。国土のグランドデザインを劇的に変える必要がある。リモートワークが転換点と見る。仕事を都市部から地方に分散しやすくなり、人の移動が起きる。また地方を特例地域として法人税を軽減すれば、おのずとその地域で雇用が増えるだろう。ここをしっかりと考える時期に来ている」(5月13日付日本経済新聞朝刊)
人口の分散は経営資源の分散に付随する。大企業や政府がリスクに対応するため、地方への資源分散をリードすることが急務だ。地震や台風などの天災のリスクを考えれば、特に太平洋岸のベルト地帯から日本海側への資源分散が必須となる。
例えば、大企業は本社機能の一部を移転したり、主幹工場を分割したりする。それに伴い、陸海運の物流網の再構築や、エネルギー源の移行などインフラの変革が起きれば、さらに資源分散が進む。
資源分散は非常時のためだけではない。地方の産業基盤も東京や大阪のみに頼らない盤石なものにしなければならない。とりわけ食料とエネルギーの産業は地域住民にとって不可欠だ。
食料について言えば、農畜産業から食品加工、流通までの総合的な基盤整備がもとめられるのだ。我々が取り組んでいるスマート・テロワールはその先んじた試みであり、工業やサービス業などにおける資源分散のモデルになるであろう。
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清野 仁 (金曜日, 03 7月 2020 21:24)
外資系医療機器や薬品関係の病院に供給されるロジスティックスは太平洋側、畜産の輸入飼料や肥料基地も太平洋側。非常時を想定すれば太平洋側と日本海側、東西に国策としてロジの分散も必要です。何とか特区は本来危機対応を根底にすべきでした。
スマートテロワールには桜前線の北上や紅葉の南下のように地域の知と国策の知のバランスとなる知となることを期待します。