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楽農と美日常をめざす若き酪農家の物語

スマート・テロワール協会主催の第4回オンライン講演会にご登壇いただいたのは、長野県小布施町で小布施牧場を経営する木下荒野さん。

この講演を聴いての気づきを以下に。

 

ジャージー種が「楽農」の決め手だった

 

小布施牧場が誕生したのは2018年。8頭からスタートして現在10頭のジャージー種の母牛を飼育している。

毎日搾乳する牛乳の半分は生乳として農協に出荷し、後の半分を加工してジェラートやチーズを製造している。

乳牛といえばホルスタインの名前がすぐに浮かぶ。日本では99%がホルスタイン。従って日本ではジャージー牛は超希少な牛ということになる。

ジャージー牛の牛乳は乳脂肪分が高く、味が濃くてクリーミー。牛乳の色は淡い黄金色をしているので「ゴールデンミルク」と呼ばれている。欧米でも生産量が少ないので高級品として位置付けられている。

飼育頭数が少ないのはホルスタインに比べて搾乳量が半分しかないためだ。しかしホルスタインに比べて一回り小ぶりな体格なので、比較的飼いやすい。

飼いやすく、しかも乳が高品質で美味しく、付加価値をつけられることに着目して小布施牧場ではジャージー種に限定して飼育している。

飼育頭数は10頭。これが家族経営での最適な経営規模だと考えている。それ以上の規模拡大は狙わない。

オンライン講演会の第1回にご登壇いただいた上野裕さんも適正規模を目指していた。期せずして小規模で適正規模が高品質を保証し、「楽農」の極意であることで一致した。

 

放牧と地域循環という経営哲学

 

冬は牛舎で飼育するが、他の季節には昼間は放牧して育てている。飼料は牧草の他に、大豆、トウモロコシ、ふすまが使われている。基本的に小布施で栽培された飼料が使われている。小布施地域で栽培されたい飼料100%を目指している。

小布施牧場では乳酸菌や納豆菌など小布施の畑から採った善玉菌で発酵した米ぬかぼかしを飼料に混ぜて飼育している。そうすると牛の糞尿から上質な発酵堆肥作ることができる。

この堆肥を牧草地にすき込みまさに持続可能な循環型の「楽農」が可能になっている。そして何よりも放牧場も牛舎も臭いがしない。

以上見てきたように、小布施牧場は「適正規模」、「放牧」、「地域循環」そして「高品質」を経営方針として掲げ、実践している。これほどしっかりした経営哲学を実践している農業経営者はそれ自体で希少価値だ。

 

ビジョンは放牧楽農の全アジア展開

 

小布施牧場の経営ビジョンはこうだ。

「小布施牧場の成功をモデルにして、全国とアジア諸国の荒れた里山を、美しくてたくましい味わいの里に再生させます」。

このビジョンの実現に向けてやるべきことは沢山ある。放牧楽農のモデルをしっかり形にすること。そして同志を募って放牧楽農の極意を伝えること。

ビジョンが実現すれば日本ばかりか、アジアの里山が美しさと豊穣に溢れるスマート・テロワールに生まれ変わっているだろう。

 

https://obusedairyfarm.co.jp/