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農薬半減目標が達成困難なわけ

 

 

 農水省は5月に「みどりの食料システム戦略」を策定した

 

その内容は農業の環境負荷を軽減し、地球環境の持続的な保護を目的としたもので、2050年までの達成を目指して次の目標を設定した。

1.    有機農業を耕地面積の25%に拡大する

2.    化学農薬の使用量を50%削減する

3.    化学肥料の使用量を50%削減する

この画期的な戦略の実現には乗り越えるべき巨大な壁があると、8月2日付けのダイヤモンドオンラインで千本木啓文記者が警告している。

「削減対象となる農薬や肥料などを扱うJAグループなどには農水省幹部が多数天下りしている。そうした農業関連事業者の利権に切り込むのは容易ではない」。

 

 殺虫剤ネオニコチノイドの使用料が15年で3.3倍増加という惨状

 

「日本の農家は同じ先進国である欧州などより農薬を多く使う傾向にある。農地面積当たりの農薬使用量は英国、ドイツ、フランスの約4倍に上る」。

コメに焦げ茶色の斑点を付けてしまう斑点米カメムシの防除に使用される殺虫剤、ネオニコチノイドの使用量を手掛かりに見ていこう。

 

 

上図は、コメの大生産地である秋田県で、水田における斑点米カメムシ防除に使われたネオニコチノイドなどの面積当たりの使用回数の推移を示したものだ。

直近4年間(1619年)の平均が10年前の4年間の平均の2.5倍程度の高水準で高止まりしている。

2000年を境に農水省が農協と連携して、ネオニコチノイドの防除回数を年2回とする栽培標準を出したことが農薬増加の決定的な要因となった。

千葉県の農協が昨年秋に農家に配布した「農薬使用ガイドブック」には、

カメムシの防除について、「2回防除が基本!!」と太字で強調している。 

だが、千葉県の農家によれば、「草刈りをしっかりすれば2回も防除する必要はない」。

水田の畦(あぜ)にカメムシが嫌がるハーブを植えればさらにリスクは下がり、防除自体いらなくなるという。

このように「過剰使用の最大の原因は、行政とJAグループが官民連合で行う“農薬利用促進キャンペーン”にある」。

 

国が決めているコメの規格がネオニコの使用をさらに助長

 コメの等級検査もネオニコチノイドの過剰使用の直接的要因となっている。

「コメは国が法律で1等米や2等米などの規格を決めている。

 例えば、カメムシに汁を吸われて黒い点が残ったコメ(着色粒)の比率が0.1%までなら1等米、0.3%までなら2等米となる。

 1等米と2等米では、農家手取りで160キロ当たり500600円もの価格差がある」。

1等米の基準を満たすために農家はネオニコチノイドを使うわけだ。

 しかし「そもそも、コメ1000粒に着色粒が1粒まで(1等米)なのか3粒まで(2等米)なのか、ということに消費者がどれだけ価値の違いを見いだすのか、という疑問がある」。

しかもすでに色彩選別機(着色粒を見分け、圧縮空気で吹き飛ばす機械)が普及し始めている。

これで着色粒が原因で2等米になってしまったコメから、着色粒を除去すれば、品質的には1等米と変わらない。

 

農薬削減は日本の輸出戦略をも左右する

 

すでに「各国が輸入を認める農産物の条件は、国内の残留農薬基準などの規制と同等になることが基本」(農水省関係者)になりつつある。

欧州連合(EU)は日本より20年も早い2030年に化学農薬の使用とリスクを半減する目標を定めている。

日本のコメの輸出拡大を実現するには、化学農薬や化学肥料の使用量を先進国基準に低減することが必須条件になっているのだ。

日本の農業は有機農業の拡大目標においても、有機農業を拡大するための環境整備においてもEUに比較して2周も3周も遅れをとっているのが実態のようだ。