循環型経済への転換が始まった

廃棄物をリサイクルして活用する循環型経済への移行がEUで始まっている。

23日日経新聞は「資源 『捨てない』経済、循環に成長の芽 」と題してこの流れを紹介している。

「廃棄物の量と処理費用は膨大だ。廃棄物工学研究所によると30年まで10年間で1660兆円。世界上場企業の利益の3倍だ。『捨てない』循環経済への転換が急務になる」。

EUが廃棄物のリサイクルに動き始めている。

「欧州連合(EU)は21年からリサイクルしていないプラスチック包装材の廃棄量1キログラムで0.8ユーロ(約104円)の負担を加盟国に求めた」。

先進企業も徹底した対策を企画し始めている。

「米アップルは全製品をリサイクル材で作る構想だ。具体化されれば、主な取引先200社は供給網見直しを迫られる」。

投資家もESGに熱心な地域への選別を始めている。

「米モーニングスターによると、21年のESG(環境・社会・企業統治)ファンドへの資金流入68兆円のうち8割は欧州だ。日本は3%にすぎない」。

EULSALife sycle assessment)の基本原則に則ったルールをいち早く設定してゲームチェンジの主導権を獲得する戦略を打ち出している。

すでに蓄電池のカーボンニュートラルの評価についてLSAを前提に基準作りが進んでいる。

「拡大だけに頼らず「循環」をビジネスチャンスと捉える動きは出始めた。米テスラ共同創業者が設立した米レッドウッド・マテリアルズはその一例だ。使用済みリチウムイオン電池からコバルトなどレアメタルを取り出し、再利用する技術を持つ。米自動車大手と組み米国内で供給網を完結させる」。

農畜産業の分野でも循環型システムへの転換の流れは今後勢いを増していくだろう。

そしてスマート・テロワール構想の柱の一つである「耕畜連携」こそこの循環型の農畜産業を完成形に導くものだ。

「耕畜連携」においては畑で収穫される農産物のうちの不良品、規格外品、余剰品が飼料として畜産業に提供される。また飼料にならないものは畑に鋤き込まれて直接畑に還る。

そして畜産業で排出される糞尿は堆肥となって畑に還る。

「耕畜連携」における物質循環の大事なところは、それが単に廃棄物の有効活用にとどまるのではなく、畑の土壌の豊穣作用をもたらすことなのだ。

畑に還る有機物は土壌内の細菌を活性化し、この細菌が畑の作物に栄養を与え、作物の品質を改善し、収量を増大する決め手になるのだ。

この有機物の活用が化学肥料や農薬の使用を減らしてやがては完全カーボンフリーの有機栽培につながるのだ。

つまり「耕畜連携」はリサイクルとカーボンフリーの両面で地球に優しい農畜産業を創り出すと言うことなのだ。

農畜産業にあっては「耕畜連携」は食品加工業のLSA型のカーボンニュートラルの切り札となると言うことだ。