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コメ栽培のイノベーション

「マイコス米」がコメ農家に旋風を巻き起こしているらしい

「マイコス米」の特徴は乾田直播の栽培体系にある。最近コメの乾田直播が普及し始めているが、これまでは栽培途中で田に水を入れて育成する方式が主流であった。

「マイコス米」の場合は播種から収穫まで水を引かず一貫して乾田のまま栽培する。

終始乾田での栽培というところが「マイコス米」の大きな特徴になる。

この終始乾田は「マイコス」というブランドの菌根菌をまぶした種籾を播くことによって可能になった。

 

「マイコス」とはなんぞや

「マイコス」はバイオシードテクノロジーズ社(https://bioseed.co.jp/)が輸入販売する菌根菌資材のブランド名で、多種の菌根菌をミックスしている。

同社製品の販売代理店のHPhttps://info-agri.wixsite.com/csplanet/mykos)に掲載されたマイコスの効能書には以下のような説明が載せられている。

陸上植物の科の80%超と共生(アブラナ科・アカザ科は対象外)

菌糸を根から長く伸ばしてリン酸を土壌から吸収

リン以外にも、窒素、カリュウム、マグネシウムや、一部の微量要素(亜鉛、銅、鉄など)の吸収も増加 

作物に抵抗性誘導が生じ、病原菌を根から排除して病害を軽減

干ばつや高塩類濃度土壌での水ストレスに対する宿主作物の抵抗性を高める

菌根菌はグロマリン(glomailn)と呼ばれる糖蛋白質を細胞外に分泌。これが菌糸を土壌に粘着させる。そしてグロマリンは土壌に蓄積し、土壌団粒の安定性を強化する

マイコスをまぶしてまいた種籾は毛細根が発達し吸水力が強まるので、田に水をはらなくとも雨水で育つということのようだ。

この効能書きを信ずれば、吸水効果だけでなく、栄養素の効果的な吸収そして病害虫耐性の拡張、さらには土壌の改善も期待できるようだ。

つまりは減農薬、減化学肥料も期待できるということだ。

 

「マイコス」米がもたらす福音

終始乾田でのコメ栽培は栽培に関わる生産性の向上に寄与する。

田に水を入れない乾田直播なら、育苗、田植え、水位の管理が省けるからだ。

農業従事者一人当たりの栽培可能面積は慣行栽培の20haから47haへと急増するという実証結果も出ている。(ダイヤモンドオンライン2024/5/7

https://diamond.jp/articles/-/343101)

もちろん反収増加も期待できる。

さらには乾田でのコメ栽培は温暖化ガス削減にも寄与する。昨今水田で発生するメタンガスが地球温暖化の要因として俎上に載せられてきている。水田から乾田への流れは温暖化対策としても注目されることになるだろう。

また乾田栽培の流れの中で、不耕起栽培への挑戦も始まっている。

https://www.youtube.com/watch?v=XXEtWH5_Ua8&t=246s

不耕起栽培を継続することで土壌が豊かになり、減農薬、減化学肥料が進化し反収増加と資材コストの削減が期待できそうだ。

「マイコス」米によってコメの生産コストが大きく削減されれば、日本米の輸出競争力が拡充する。その時減反政策はもはや捨て去られ、全ての休耕田で再びコメが栽培され、日本は強大なコメの輸出国に変貌してゆくだろう。

 

輪作体系の導入そしてスマート・テロワールへ

終始乾田化した田ではコメ以外の穀物が栽培可能になる。コメだけでなく小麦やとうもろこしや大豆を栽培することで土壌は肥沃化し、さらなる土地生産性の改善が可能になる。輪作体系の導入は一気に進展し始めるだろう。

となれば、小麦や大豆やとうもろこしの自給率は改善される。

これまでほとんど輸入に頼ってきたとうもろこしが栽培されれば畜産の事業基盤が強固になり、畜産業の拡大も視野に入ってくる。

そればかりか田園は多様な穀物が生育する姿へと変貌して、農村の景観が一気に色とりどりな色彩を帯びて輝きだすに違いない。

まさに松尾雅彦氏が夢見た美しい村が至る所に出現する。つまりスマート・テロワール構想の揺るぎない基盤が構築されることになるわけだ。

「マイコス」米の普及から当分目が離せない。

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コメント: 1
  • #1

    徳永俊一 (金曜日, 17 5月 2024 10:58)

    愛媛県立今治北高等学校の徳永俊一でございます。今年度から高校教員(公務員)としてフルタイムで勤務しながら、並行して、佛教大学大学院社会学研究科社会学専攻(通信教育課程)修士課程に在学し学修と研究に励んでおります。故松尾雅彦先生、中田康雄先生の文献資料(スマート・テロワール構想、美しい村)のなかで、勉強し引用させて頂きたいと存じます。マイコス米の情報を有難うございました。大変勉強になりました。今後とも御指導御助言賜りますよう宜しく御指導申し上げます。徳永俊一拝